既然LS发了会长给LULU举办生日的图，那我也发段讲述这个题材的文章好了，写得还是很不错的
朝が、来る。
数え切れないほど迎えた朝、そして１７回目の朝が。
まだほんのりと薄暗い部屋の中で体を起こし、立ち上がる。
不意に聞こえた物音に気づいて振り返れば、勝手に家に住み着いた少女があどけない顔でまだ夢の中に居た。
「…のんきなものだな」
その寝顔を見て小さい溜息を一つつき、壁にかけてある制服に手を伸ばす。
きちんとアイロンのかけられたそれに腕を通し、そしてカーテンを開いた。
冬は、日の昇りが早い。
カーテンを全て開いて遠くを見れば、もう東の空が明るく輝き始めていた。
薄暗かった部屋に光が差し込み、段々と明るく染め上げていく。
そんな雲の少ない空を見ながら今日は晴れるのだろう、とぼんやり考える。
と同時に、雨なら良かったのに…とも考える。
俺はカーテンを開いた手を軽く握り締めて部屋を出た。
「あ、お兄様。おはようございます。」
「おはよう、ナナリー。今日はいい天気になりそうだよ」
ダイニングに行くと、既に準備を整えたらしいナナリーがいて。
俺は隣の席に腰掛け、さっき部屋の中から見た天気を教えてやる。
「本当ですか？よかった…」
「嬉しい？」
「ええ。だって、今日はお兄様のお誕生日でしょう？」
誕生日。その単語を聞いて俺は少し体を強張らせる。
「あぁ…そういえば…覚えていてくれたのか？」
その強張りをごまかすようにきわめて明るく呟けば、目の見えない妹に気づかれる事は無い。
俺の言葉を聴いて、案の定嬉しそうな、おかしそうな笑顔を浮かべた妹は
「当然です。お兄様の誕生日を忘れるわけ無いでしょう？おめでとうございます。お兄様」
その笑顔のまま、祝いの言葉を俺にくれた。
俺は複雑な胸を内を隠しながら、ナナリーの手にそっと触れる。
「嬉しいよ、ナナリー。有難う」
「どういたしまして」
そして、偽りの言葉を口にする。
目の前の嬉しそうな妹の笑顔を見ながら思うのだ。
ああ、やっぱり雨が降ればよかったのに…と。
「ル、ルーッシュくーん。大人気じゃない。今日は」
「千客万来、だな…」
「まったまたー。つまんなそうな顔しちゃって。本当は嬉しいくせに～この、この～！」
学校に行く前。学校に行く道すがら。そして学校についてから。
朝から今の放課後まで何度声をかけられ、はてはプレゼント迄もらった事だろうか。
高く山積みされてしまった贈り物を見て羨ましがるリヴァルを尻目に、俺は今日何度目かの溜息を吐き出していた。
自分から教えた事は数少ないはずなのに、何故こうも皆に広まっているのか。
そう自問自答すれば脳裏に楽しそうな生徒会長の姿が過ぎり、あぁそうかと納得してしまう。
十中八九、出所はそこなのだろう。
「は、ぁーい?今日は我らが副会長、ルルーシュ君の誕生日を祝って、お誕生会を開催しまーす！」
「さっすが会長ー！今日も豪勢！やっるぅ！」
「ふふん。とぉーぜんっ。で？今日の主役はなんでぶーたれてるのかな？」
「…会長、ですね」
広いテーブルの上に並べられた準備段階の、けれど豪勢な食卓を前にはしゃいでいるリヴァルの声を聞きながら
確信にも近い疑問を少し恨みがましい目線と共に投げかけた。
俺のその問いを受けた会長は、しかし何も答えず、変わりににんまりと笑みを浮かべ返してくる。
顔は雄弁に語る。最早、それだけで言葉は要らなかった。
「お祝い事は皆でしなくっちゃ、ね?」
ダメ押しとばかりにそう言われてしまっては、もう二の句が継げられない。
また一つ呆れたように溜息をつき、髪をかきながら立ち上がる。
「だからといって、全校生徒にふれ回る事無いでしょう？」
「何事も盛大にいかないとね～?それとも嬉しくない？」
「それは…まぁ…」
嬉しいか嬉しくないかと問われれば嬉しいに分類はされるだろう。
しかし登校中も、休み時間も、昼食の間でさえ休む暇なく来客に追われれば流石に疲れるというもので。
放課後ともなれば、ここぞと人が押し寄せてきそうな気配を感じて早々に生徒会室に逃げ込んだようなものだ。
けれど此処も例外なく祝いの席と化していて、またか…と脱力感を感じるのは否めない。
最も、この事態を企てた張本人がいるのだからそれも当然といえば当然なのだが。
「照れるな照れるな。祝って貰えるうちが華よ？」
「はいはい。判りましたよ」
「そーそ。あとは俺にそのおこぼれを回して貰えるともっと有難い」
「リヴァル…」
悪びれもなく言う会長と、さりげなく鳶が油揚げをさらうようにアピールするリヴァルとに囲まれて、俺は苦笑を禁じえない。
着々と準備が進められているのを見ながら、さりげなくベランダに移動する。
主賓が居ない方が準備がはかどるだろうと考えたのもあるが、それだけではない。
扉を開け、一歩外に出ると冬の冷たい風が肌を撫でていく。
そこから見える空は相変わらず晴れていて、雲もぽつぽつとしか見る事が出来ない。
これでは雨は降りそうに無いな、と日が暮れかけた空を見て俺は肩を落とした。
誕生日を祝って貰う事が嫌いな訳じゃない。
少なくとも、７年前までは毎年この日が来るのを一日千秋の思いで待っていたのだから。
早く大人になりたかったのかもしれない。
母様から、ナナリーから貰える言葉とプレゼントが欲しかったのかもしれない。
今ではその理由を思い出す事は出来ないけれど、酷く楽しみにしていたものだった。
でも、今は――…
冷え込む風からか、体の内から湧き起こる感情からか…震えだした体を抱きしめる。
名前も嘘、経歴も嘘。全て嘘だらけの毎日。
生きながらにして死んでいるような生活。いや、始めから…生まれた時から生きてなど居なかったのだろう。
ただ、自分が生きていると錯覚していただけで。
『お前は、生まれた時から死んでおるのだ…』
『お前が生きた事など、一度も無い…！！』
「―…ッ…！！」
脳内にリフレインする、あの男の言葉。
俺は、何の為に生まれてきたのだろうか。
あの男の道具となるためか。外交の餌食にされるためか。
運命に弄ばれ、翻弄され、生ける屍のまま生を終える為にこの命はあるのだろうか。
そう考えるだけで、今日という日に意味を見出せないのだ。
「…雨が降ればよかったんだ…」
雨が降るどころか、いつの間にか雲ひとつなくなっていた空を見上げて呟く。
錯覚してしまう。
この世界に必要されているのだと。生きているのだと。
せめて、空が嘆き悲しんでくれたならこんな馬鹿げた錯覚を起こさないで済んだのだろうか。
力を、手に入れた。
世界を変えられる、世界を支配できる力を。
折角力を手にしたのに、自分で世界を変えたいと思っているのに
必要とされる事に不安を覚えるなんて、なんて矛盾しているんだろう。
今年は今までとは違う。
そう思う一方で、そう簡単に抜け出せないのだ。
今までの暮らしから…１７年間の色の無い生活からは。
「…シュ…」
ああ…俺は、何の為に…
「ルルーシュ…ルルーシュ！！」
「っ…！」
突然近くで呼ばれた名前に顔を上げれば、不思議そうな顔でこちらを見る幼馴染の姿があった。
まだ準備には時間がかかりそうで、まだ呼ばれる訳が無いと高をくくっていた所為もあるのだろうが
どちらかといえば考え込んでいたから気づけなかった、という方が正しいだろう。
「何回も呼んでたんだよ？どうしたの？」
「…スザク。ごめん。ちょっと考え事してて」
肩を竦めて謝罪し、今日は姿が見えなかった彼に向き直る。
気にしないでいいよ、と笑うスザクは軍務が終わってから登校したのだろう、少し疲れているようにも見受けられた。
近くにある椅子にさりげなく誘導してやると、少し困ったようなはにかむような笑顔が向けられる。
「今日も疲れたんだろ？休めよ」
「はは…うん。有難う」
ダメ押しにそう告げてやり、導くまま椅子に座ったスザクを見て俺も隣に腰掛ける。
風は酷く冷たいのに、近くに人が居るだけでこんなにも暖かい。
隣に居るのがスザクだから…なのだろうか。
「今日、誕生日だったんだね…ルルーシュ…」
「え、あぁ…まぁ、な…」
けれど不意にスザクから紡がれた言葉に、俺は体を凍らせる。
表面上には決して出さない俺の心。
スザクはナナリーのように見えない訳ではないから、深く見られたらおしまいだ。
頼む。気づくな。気づかないでくれ…そう思いながら自然と左拳を握り締めた。
「ゴメン。忘れちゃってて…」
「７年も前の話だ。忘れていて当然だよ。気にする事は無い」
「…冬、迎える前に…別れちゃったしね。７年前も…」
「…ああ。」
しみじみというスザクの言葉を聴いて、心の中に靄が生まれる。
「おめでとう。ルルーシュ」
そして、その靄は益々深くなった。
生きていると思っていた。けれど死んでいると告げられ、死んだ事にさせられ、嘘偽りで塗り固めた世界に放り込まれて。
何一つ真実の無い、ただ利用されるだけの道具の俺は生きてすら…いないのだと。
祝う価値も無い…誰かに祝って貰える価値なんてありはしない。
その相手がスザクなら…尚更だ。
「…誕生日なんて、祝う意味無いだろ…」
「ルルーシュ？」
「ただ１つ歳を取るだけじゃないか…何でそんな事を祝おうと思うのか…」
今日祝ってきた名前も顔も一致しない奴らを思い出す。
『今日誕生日なんですよね！』『おめでとうございます。』『これ受け取ってください。』
何度と無く聞いた台詞。皆が皆、同じ事を同じような顔で言う。
何も知らない奴らが、嘘で塗り固めた俺に…既に死んでいる俺に何故祝いの言葉を向けるのか。
気がつけば、気づかないでくれと願う俺の気持ちは反対に作用して、
スザクに対して憤りをぶつけてしまっていた。
気まずい空気が俺達の間に走っていく。俺はいたたまれなくて顔を上げる事が出来ない。
こんな自分に祝辞を述べてくれたにも拘らず、ただ自分の感情に任せて思いを吐き出してしまったのだから。
握り締めた左手に痛みが走る。けれど、スザクが今どんな目をして自分を見ているのか…考えるだけで心が痛くなる。
こんな事、誰にも言うつもりなんてなかったのに…。
「…意味はあるよ。」
「…スザク？」
しかし、そんな沈黙の後にスザクから帰ってきたのは自分の憤りに対する返答で。
どういう意味だと顔を上げれば、責めもせず、否定もせず、ただ優しく笑うスザクが隣にいた。
「だって、ルルーシュが生まれてなかったら、僕達は出会えなかったじゃないか」
「…スザク…」
その優しい笑顔から紡ぎだされた答えは至ってシンプルな解で。
「皆、そうなんじゃないかな…ルルーシュに出会えて嬉しいと思うから…だからだよ。きっと」
「俺の存在はっ……、嘘なんだぞ…偽りだらけなんだぞ…？」
思わず大きな声になりそうになるのを慌てて押さえ、握り締めた手を見下ろす。
今、俺の真実を知っているのはナナリーとスザクの二人だけ…
何もかも嘘で塗り固めた、そんな人間に会えてよかったと思う人間が居るものか。
「ルルーシュが嘘だと思っても、皆にとってはそれが真実なんだよ」
しかしそんな考えを否定するようにスザクが言葉を紡ぐ。
「皆、今の君に会えて良かったと思ってる。それに…」
優しい言葉が、囁かれる。
「名前も身分も嘘だとしても、今日ルルーシュが生まれた事は真実だろう？」
そして、気づかされた。
たった一つ、自分が持っていた真実に。
「…スザク…」
握り締めた左手から、痛みが消えていく。
スザクが向けてくれる笑顔は、言葉はこんなにも優しく暖かい。
「有難う…」
心の靄が、晴れていく。
そう、自分がこの世に生を受けたのは紛れも無く今日なのだ。
例え生まれた時から死んでいると言われようとも、それだけは変わらぬ真実。
嘘偽りで作られた自分にとって唯一の…
「ル、ッルーシュー！準備できたわよー！」
スザクの言葉に感慨に浸る間も無く、会長の声が部屋の中から聞こえてくる。
調子を崩されて仕方ないなと思いつつも部屋の中を見れば、
「ルルーシュ君お誕生日おめでとう」の垂れ幕が下がっていたり、
どこから持ってきたのかくす玉すら用意されているという念の入れようで。
「…此処まで凝らなくたっていいじゃないですか…」
これでは感動を通り越して最早呆れてしまう。
ちらりと隣のスザクに目をやれば矢張り気持ちは同じだったようで、苦笑いしか出てこないようだ。
「言ったでしょ～！何事も盛大に、大胆に！」
「会長カッコイイー！！」
びしっと指を突き出す会長に、それをはやしたてるリヴァル。
それを見守るシャーリーとカレン、ニーナ。そして笑顔のナナリー…いつもと変わらぬ光景だ。
スザクと顔を見合わせた俺は、そんな光景に呆れつつ、笑いながらも中に入った。
「ルル、これ…私から。お誕生日おめでとう。」
沢山の料理が並ぶテーブルに近づくと、少し大きめの袋をシャーリーが差し出して来る。
祝いの言葉と共に。ちょっとはにかんだような表情で。
「…有難う。シャーリー。」
受け取りながら例を述べると、どういたしまして、という言葉と笑顔が俺に向けられた。
それを見て、あぁ、そうなんだと実感できる。
皆が見ているのはルルーシュ?ランペルージであって、ルルーシュ?ヴィ?ブリタニアではないのだという事が。
こんなに単純な事に気づかずに居たのかと今なら考えられる。
これは簡単な問題なのに難しく考えすぎてから回りする、典型的な間違い。
そして、そんな問題を解決に導くのは、いつだってシンプルな考え方なのだ。
「さって、それじゃいっくわよー！」
「HAPPY BIRTHDAY Lelouch～！」
会長の合図でパーン、と皆の持っていたクラッカーが破裂する。
色とりどりの紙ふぶきとリボンの舞い散るのを眺める中で、
ルルーシュ?ランペルージとして生きる世界に漸く色がつきはじめたような、そんな気がする。
そして、今日という大事な日が晴れてよかったと思うのだ。
そう、俺はこの日…再び、そして初めてこの世に生を受けた。
かけがえの無い人が気づかせてくれた、大切な真実を握り締めたままで。
