ローゼン閣下こと麻生太郎、中国コンテンツ脅威論を一蹴 「あの国から面白いコミックが出てくるとは思わない」
2005年から2007年まで外務大臣を務めた自民党の麻生太郎氏は、マンガ文化の
よき理解者として知られる。外務相時代には国際漫画賞を創設した。経済一辺倒で
尊敬されない「金持ち日本」から、「世界に一目置かれる日本」に飛躍する上で
「マンガ、アニメは大きな武器になる」と説く。
―― 麻生さんは今も本当にマンガをお読みになっているんですか?
麻生 読んでますよ。これはもう、義務として。
―― 若い人たちは、麻生さんのことを「ローゼン閣下」と呼んでいるみたいですね。
麻生 たまたま空港でね。「ローゼンメイデン」というのは少女マンガ風の作品で、
どんなものかなあと思って読んでいるところを誰かに見られたんだな。 ―― マンガ、アニメといった日本のコンテンツが世界の注目を集めています。
麻生 米タイムズ誌が2003年に「アジアはJポップス、Jファッション、ジャパニメーション
(日本のアニメ)の3Jに席巻されている」と書きました。表紙は椎名林檎ですよ。
ある人に「椎名林檎を知ってるなんて偉い」とほめられたけど、あれは娘に
教えられたんだな。
それはともかく、最近、ニューヨークの高級な寿司屋に行くと、マグロは「TUNA」
ではなく「TORO」と書いてある。
英語で牛は「カウ」か「ブル」だけど、レストランに行くと(フランス語で成肉牛を意味する
ブッフを語源とした)「ビーフ」になる。あれはフランスの食文化に対する尊敬の現われでしょう。
そう考えると日本の文化的な立場というのも、確実に上がってきている。「カワイイ」や
「モッタイナイ」もそのまま英語で通じるようになった。
飯倉公館にご招待する外国のお客さんに「何が食べたいですか」と聞くと、ほとんどが
「日本食」と言う。だから外務大臣は週に3回か4回、懐石料理を食べることになるんだけど。
皆さん日本通で、ハシの使い方なんか、日本の若者よりずっとうまいからね。
―― 昔、阪急グループの創始者、小林一三氏が、国には「憐れみを受ける国」「可愛がられる国」
「尊敬される国」の3つのステージがある、と言いました。
いま「クールジャパン」と言われているのは、まだ面白がられている段階で「尊敬される」レベルに
至っていないのではないでしょうか。
麻生 尊敬される条件というものがあるよね。子供の頃、学校の外で尊敬されるのは
腕力の強い番長、教室で尊敬されるのは勉強ができる級長と相場が決まっていた。
腕力がなくて勉強もできない金持ちの子というのが一番いじめられる。自分が金持ちの
セガレだったから、そのへんはよく分かる。金持ちは好かれませんよ。
国も同じなんですね。腕力は軍事力、勉強が文化水準、お金は経済力。お金だけの
日本は一番いじめられるタイプだった。最近ようやく、ちょっと勉強もできるようになって
一目置かれ始めた。自衛隊はインド洋沖の給油活動が認められ、イラクでもその規律の
高さが評判になった。力もついてきているわけだ。
―― 勉強で一目置かれるようになる過程で、マンガやアニメが果たした役割は
大きいというのが麻生さんの持論ですよね。
麻生 そう。日本の自衛隊が復興支援していたイラクのムサンナー県というところでは、
タンクに「キャプテン翼」の大きなステッカーを張った給水車が走ってますよ。
日本のODAで提供した車です。
最初は「タンクに大きく日の丸を描く」というから、僕はこう言った。「君たち、ぱっと見て
イラクとイランの国旗の区別がつくか」と。それでイラクの人たちが知っている日本のものは何か、
と聞いたら「キャプテン・マージド」だと言う。「キャプテン翼」をあちらではこう呼んで、
大人気なんですね。じゃあそれで行けと。キャプテン翼の給水車はまだ一度も襲撃されてませんからね。
サッカーの元フランス代表だったジダン選手やイタリア代表のトッティ選手も
「サッカーをはじめたきっかけはキャプテン翼」と言っている。
そういう影響力は馬鹿にできない。戦後、GHQの占領政策で成功したのは映画とマンガ。
ハリウッド映画を見て日本人はアメリカに憧れたわけでしょ。マンガで言えば「ポパイ」と
「ブロンディ」だ。ポパイのモデルはやさしくて力持ちの米兵で、ブロンディは日本の女性に
「郊外の一戸建て」「核家族」「電化製品」という生活の理想像を植えつけたんだから。
―― 世界中が日本のマンガやアニメに注目している今は、絶好のチャンスなんですが、
実は製作現場は疲弊している。アニメの現場は平均賃金が時給540円。産業として持続的に
成長するのが難しい水準です。
麻生 それはどこかに歪みがあるんでしょう。儲けすぎている人がいるとかね。
だったらストでもやればいいんだが、マンガ家の人たちにそういう感覚はない。
「知的財産権をちゃんと主張すればもっと儲かる」と指摘しても「僕たちはどんどん
新しいのを作るから、別に構わない」と言うんだな。描いていればハッピーな職人気質だから。
自分たちでできないなら、それが得意な人たちと組めばいい。うまく交渉してくれる
プロモーターを雇うとかね。役人と政治家は駄目だよ。その辺の感性が欠落しているから。
―― 日本のコンテンツがもてはやされる背景に、ハリウッドの影響力低下がありそうです。
昔はハリウッド映画というだけで無条件にヒットしましたが、最近はそうでもない。
麻生 そうかなあ。むしろ相対的に日本のコンテンツの質が上がったということじゃないか。
昔の邦画のキスシーンなんて、ぎこちなくて見てらんなかったけど、最近やっと様になってきた。
表現力がついてきたというのかな。それは国が豊かになった証拠だよね。GDP(国内総生産)で
言えば米国が少し落ち、日本が急伸して差が縮まった。
最近「ミッドナイトイーグル」っていう邦画を試写会で観てきたけど、あれも米国の失敗を
日本がカバーするっていう設定。昔じゃ考えなれないストーリーだよね。
―― 中国や韓国は国策としてコンテンツ産業の育成に力を入れています。もたもたしていると
日本は追いつかれてしまうのでは。
麻生 中国に関しては、あの国から面白いコミックが出てくるとは思わない。表現の自由を
あれだけ規制したら、新しいものは出てこないよ。それに比べて日本は恐ろしいほど自由だからね。 引用元:NBonline(日経ビジネス オンライン)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20071204/142310/?P=1 http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20071204/142310/?P=2 2ch联动:
http://news24.2ch.net/test/read.cgi/moeplus/1196907706/