===============写在正文的前面的东西===================================
1)OCR by dracula04
2)虽然暂时无翻译,但也请勿随意转载至其他论坛,OCR也是很辛苦的- -|
3)本文只发布于漫游音乐区/声优及广播剧讨论专版
4)主要还是希望自己放假了别光玩来着,要努力务正业啊
内容:ドラマCDに収録の小説を集めた「圭」バージョン。
ライナー・ノーツは二人がお互いをいかに大切に思っているか・・・ラブラブでごちそうさまな話。
翻译应该是会有的……正抓人中~找不到人只好自己来了||
===============正文===================================================
ライナー・ノーツ〔圭〕富士見二丁目交響楽団シリーズ外伝
秋月こお
目 次
007 桐ノ院圭のこと(守村悠季)
010 名曲思い出アルバム
013 歌劇《タソホイザー》序曲 《フィソラソディア》
028 親愛なる守村悠季兄へ
033 男の闘い
080 怖い話
088 曲目解説 歌劇《さまよえるオランダ人》《美しく青きドナウ》
092 レッツ・デート!
004 圭、その人に会う
==============================================================================
表紙・本文イラスト西炯子
==============================================================================
桐ノ院 圭 Kei Tounoin
1990年、東京芸術大学音楽学部指揮科に入学。翌年中退して渡欧し、ウィーンとベルリンを中心に武者修行に励む。
93年に帰国し、MHK交響楽団のアシスタント指揮者に就任。また富士見市民交響楽団の常任指揮者も務める。96年1月のM響定期公演において急病のベッケルマイヤーの代振りとして本拠地デビューし、大成功を収める。
ヘルベルト・フォソ・カラヤソ、南郷忠大、フリードリヒ・キルヒナーの各氏に師事。
==============================================================================
桐ノ院圭のこと
桐ノ院圭はマイペースである。何をするにも、彼には彼の厳然としたテンポとリズムがあって、それは彼の振りとおなじく、まわりに合わせて変わったり、影響されて狂ったりすることはない。
桐ノ院圭は頑固である。めったに口にまでは出さないが、彼がこうと決めたことは動かさない人間なのは、彼を知っている誰もがわかっていることだろう。もっとも、そもそもあのポーカーフェイスに見下ろされつつも、彼に論戦を挑めるような強者は、僕の知っているかぎりでは多くはないのだが。
桐ノ院圭は心優しいロマソチストである。彼の指揮が振り出す音を聴けば、あなたもそう思うはずだ。そして、そうした印象は間違っていない。彼はたいへんなロマソチストなので、頑固にマイペースに自分の美学にこだわるのだ。
桐ノ院圭というのは、そういう男である。
守村悠季
==============================================================================
名曲思い出アルバム 桐ノ院圭
歌劇《タソホイザー》序曲
楽劇四部作《ニしヘルソグの指環》という空前絶後の超大作を残したワーグナーが、この《タソホイザー》を作曲したのは、一八四二千四五年にかけて。おなじくロマン的歌劇といわれる言ーエソグリソ》や《トリスクソとイゾルデ》とは作曲時期も近く、また題材もドイツ古来の騎士道伝説をモチーフとしているという一貫性かある。
僕が歌劇に目覚めたのは、じつは、大掌中週後にベルリソに留学してからだった。それまで歌劇を知らなかったという意味では無論ない。ただ僕は、歌劇を楽曲の集合として聴いていて、それが音楽を表現主体とはしていても、内容的には確固とした物語のある劇であるということに気づいていなかったのだ。
これは、アリアを聴いても歌詞の理解ができなかったという、僕の語学力にも一因があるが、最大の原因は、『音」だけに興味を持って音楽芸術の真の幅の広さを理解していなかった、僕の偏向性にあった。
うまく言葉にできないが、歌劇の真相に目覚める前の僕にとっては、歌詞は必要なかったのだ。それはアリアという音の流れを形成する一部にしか過ぎず、意味があろうとなかろうと、僕には関係なかったのである。
しかし、ベルリソ留学でドイツ語にも習然したころに、バイロイトでめぐり合った《タンホイザー》は、それまでおぼろに思い込んでいた単なる悲恋物語などではなく、僕にとっては衝撃的な内容をはらんだ物語だった。
禁断の恋と絶対の道徳観のあいだで悩み、迷った自分に絶望し、神=道徳を捨てて恋を選ぼうと決意しながら、結局は果たせなかったタソホイザーという不幸な男の軌跡は、僕自身の未来を予言するかのように思えたのだ。
だから僕は《タソホイザー》を聴く。自身の価値観に迷いを生じた時、人はどんな末路をたどることになるのかを忘れないために。
僕にとっての(タソホイザー)は、歌劇というジャソルの正しいとらえ方を教えてくれた作品であると同時に、いったん選び取ったからには絶対に迷ってはならない人生の、戒めという名の指針なのである。
《フィソラソディア》
ウィーソ遊学時代の恩師であるマエストロ・キルヒナーのお嬢さんからの、 『父親が病に倒れた。不治のものかもしれず、ケイに会いたがっている。近いうちに顔を見せてもらうわけにはいかないだろうか』
そんな内容のエアメイルか、成城にある実家経由で桐ノ院圭の手に届いたのは、圭が富士見二丁目交響楽団の常任指揮者に就任してから二か月半ほどがたった、七月も未の頃だった。
受け取って、圭は迷った。
キルヒナー師は「ウィーンにいるかぎり、私を父と思って頼ってほしい」と赤ら顔をほほえませ、実際に息子あつかいのあたたかさでなにくれとなく面倒を見てくれた、圭にとっては恩も親しみもひとしおに感じている人物だ。
が、その愛娘のマリア・キルヒナーは:・・・・
艶やかなアルトに恵まれた才能あるオペラ歌手で、美人で聡明で社交界の花。圭にワルツを教授してくれたのは彼女だった。そして春の祝祭の日、花で飾られたメイボールのかたわらでの「恋におちた」という告白で圭を困惑させ、「結婚したい」という申し出で圭に滞在期間を切り上げさせたのも。
むろん、キルヒナー邸を去る前に、貴女の望みには添えないというケリはつけてきた。だがマリアは、オーストリアを代表する女性であるマリア・テレジア……かのマリー・アソトワネットの母親にしてヨーロッパ史上骨付の女傑とおなじ名前を持ち、圭の見るところでは、気質をも受け継いだ女性だった。
「貴女を恋人として愛すことはできない」と断言した圭に、「年上だから? でも私はあなたを愛してるし、あきらめるつもりはないわ」と肩をそびやかした。女は愛せない性癖なのだという告白にも動じなかった。
結局、圭のほうが逃げ出すしかなくて、まだ未練は多々あったウィーソをあとにするザマに追い込まれた。
そんなマリアからの、手紙。
だから、それがマリアだけからの物だったなら、破り捨てて終わりにしていただろう。
しかしエアメイルには、キルヒナー夫人からの手紙も同封されていた。
『なつかしいケイヘ』という書き出しの、控え目ではあったがキルヒナー師の不調にも言及して、『機会があるならぜひ訪ねてほしい』と結んであった夫人のみじかい手紙は、もしそれもマリアの作戦の産物ならば、見事な謀略の小道具と言えた。
そして国際電話を使った瀬踏みの成果は、キルヒナー師が『病気療養のため音楽活動を停止している』という事実のみ。
結果として圭は、片恋の思い人守村悠季への再チャレンジ中の舞台であるフジミが夏休みに人った、八月七日のチケットを取って、ウィーンに飛ばざるを得ないハメになった。
オーストリア共和国の首都……というより音楽の都と言ったほうがピンと来る。ウィーンは、一年前の五月に後ろ髪を引かれる思いであとにしたときと比べて、変わっているのは季節が織りなす様相だけだった。
音楽の都の中枢である旧市街をぐるりと囲むリンク通りからほど近い、オぺラ座が目と鼻の先というキルヒナー邸ではゾフミア夫人が銀の盆に山盛りのケーキやトルテを用意して、圭の到着を待ちかまえていた。
「ああ、ケイーなんて嬉しいんでしよう。もっと早く知らせてくれていたら、マリアも出かけたりしなかったのに。あなたったら、空港に着いてから電話してくるんですもの」
「すみませんニフミア。それで、マエストロのお加減は?」
夫人の話では、長年ためこんだ脂肪のおかげで心臓かかるい狭心症の発作を起こしたので、シしスソオフに人っていたのを幸いに、休養も兼ねた入院をしているということだった。
場所は、市内からバスで一時間ほどの温泉地の病院。夫人には、このチャソスを利用してホイリゲ(居酒屋)とのつき合いを減らさせようという意図もあるらしかった。
ともかく、マリアの手紙にあった「不治の病かもしれない」ようすは、夫人の話にも表情にも現れていなかった。
二つは食べなくてはならないのがこの家のルールの、甘くてボリュームたっぷりのケーキを、コーヒーの助けでどうにか胃におさめて、パしテソの病院に向かった。
マエストロ・キルヒナーは、病室を訪れた圭を、ベッドから飛び出して「ケ~イ!」と抱きしめ、「会いたかったよ‐」とホイリゲでのアームレスリソグ・チャンピオンの腕で締め上げた。
「どうしたんだね、バカソスか?そうか、いやァ寄ってくれて嬉しいよ」
笑顔も色つやも元気はつらつ。
「ニッポンでの仕事はどうだ、ん? いやいや、顔を見ればわかるよ。実りある日々を送っているんだね。だが、小さな悩みはある。どうだね?図星かね?あっはは、よしよし、聞こうじゃないか。わたしは小さな悩みの相談に乗るのは得意なんだ」
世話好きの好人物は、長年のケーキの食べ過ぎとワインの飲み過ぎが作った問題をかかえている以外は、いたって健康そうだった。
……やはり、マリアの手紙は策謀だったのだ。
だから、圭がその夜キルヒナ‐邸の客として過ごしたのは、それが夫人のたっての希望だったから。母娘二人の晩餐に愛想よくつき合い、請われるままに久しぶりのピアノと向かい合ったのも。《愛の挨拶》を弾いたのも、夫人のリクエストだったからだ。
そんな圭を、マリアは、結婚が決まっている娘らしい控えめさでもてなし、だが、その目の奥には不穏な熱をこもらせていた。
ここにいた半年間、自室として使わせてもらっていた客間の、勝手知ったる影印で、時差のある旅の……というより入づき合いの疲れを癒して。そのまま寝るつもりのバスローブ姿で、明かりを落とした部屋を横切って。ヘッドに入りかけて、圭はギョッとした。
まさかの先客は-マリア。
「なにをしているんです」
思いきり冷ややかに作った声音と非難以外の意味はふくめない口調で言ってやった。
マリアはガバと抱きついてきた。薄化粧と香水だけがよそおいという姿で。
「一度だけでいいの1・」
熱い吐息が、圭の耳元で激しく囁いた。
「おねがい、わたしに恥をかかせないで。抱いて!」
「僕が女性には興味のない男だというのは、はっきり申し上げてあ ったと思いますが」
「愛してほしいなんて言ってないわ。だからョハンのプフポーズを受けた。でも一度だけ……一度だけでいいから、あなたを愛させて ほしいの!身体だけでいいから、あなたを愛させてほしいの! おねがい、ケイー」
マリア・キルヒナーは、圭にとっては年上とはいえ、まだ花の盛 り。また歌い手の声だけでなく容姿も重視したカラヤソのオペラに も、充分出演できただろう。そんな女性の、ふくよかな乳房もなめらかな太腿も惜し気もなくあらわしての懇願に、無くならずに済む男がいるだろうか。
いるはずがない、とマリアは思っていた。
………が、どんな事例にも千分の三は存在するという例外の法則は、実在した。
みずからを据え膳としてさしだした美女の指を「失礼」と解きはずした男が、それ。
なおも取りすがろうとした白い手を、圭は冷酷な一瞥で振り払った。
「僕のすべては、身も心も、すでにある人に捧げてしまっている。貴女の希望には添えません」
「でも……その人は殿方なのでしよう?だから、わたし、あなたの子供を産んであげるわ。いえ、産ませて。あなたの子供を」
その瞬間、圭はマリアの知らない男に更新した。無愛想だがハソサムで神秘的な魅力の持ち主であるケイ・トウノイソではない、身も凍るような悔いと痛みを与える何者かに。
その痛みが、圭の目の中を走った彼の心の激痛を感じ取ったもの であると気づいて、マリアは青ざめた。
「よけいなことです」
冷たく静かに言いきって、若者はマリアに背を向けた。
「出ておいきなさい、レディ・マリア」
泣いてもわめいてもむだだと、マリアは悟った。
わたしは彼のアキレスの更けピンを突き剌してしまった。もう友情すら残らない。
絶望と後悔からこみ上げる涙と闘いながら、それでもしゃんと頭をあげて出て行く彼女の後ろ姿を、圭は、固い表情で見送った。
それから、ため息で肩のこわばりを振り払って、廊下に出た。居間の棚にあるはずの師秘蔵のブラソデーの助けでも借りなければ、不愉快で眠れそうになかったので。
翌日、ヘルシソキ空港に長身の若い東洋人が降り立った。旅慣れたようすの若者は鉄道駅でラッペーソラソタ行きの切符を買った。
それからの一週間、(カレワラ伝承の地》カレリア観光のガイドを務めるハソセソは、毎日どこかでおなじ東洋人の姿を見かけた。
湖を見下ろす高台で、若者は何かを待つふうにたたずみ、あるいは何者かを探すふうないら立った大股で森の中を逍遥していた。
一週間目のその日。湖のほとりの公衆サウナで会った若者に、ハソセソは声をかけた。
「フィソラソドを探しているのです」
という若者の答えに、ハソセソは肩をすくめてみせた。
「あんたが見てる湖も空も森も、全部フィソラソドだぜ。夏の、だ
がね]
「……ああ」
と若者はかすかにほほえんだ。
「そうですね……」と目を閉じた。
ややあって、若者の唇から《フィソラソディア)の一節が流れ出した。
「へえ、あんた、犬ヘリウスを勉強してるのかい」
会話を続けるつもりで言ったハソセソは、無視された。……というより、ハミングをうなりながら指揮者の手ぶりで指を振っている若者には、聞こえなかったらしい。
「ふうん………あんた、音楽家かい」
ひとりごとの意味しかないセリフでおしゃべりにカタをつけて、ハソセソは蒸し焼き小屋を出た。そろそろ水風呂に移動するべき時間だった。
灼熱の横恋慕への清算をすませ、清涼の地での《フィソラソディア》の研究を兼ねた気分転換を果たして、酷暑の富士見町に帰ってきた圭を迎えたのは、自宅前で半死半生の避難をしていた片恋の相手の「待ってた……」というつぶやきだった。
駆け寄って、かき抱いた。
旅のあいだもなにかにつけて胸を騒がせていた愛しい想い人は、圭に、やっとのことでオアシスに出会えた旅人のほほえみを寄越し、すべてを圭に託して気を失った。
「守村さん?守村さんり気をしっかり持って!すぐですから!すぐ医者を呼んであげますからね、しっかりしてください!」
死に神の腕からひったくる勢いで抱き上げた身体の、正体をなくした重みを意識する余裕もなく、あたふたと鍵をあけにかかった圭の脳裏からは、マリア・キルヒナーの面影もジベリウスの愛した国土の印象も、きれいさっぱりと消し飛んでいた。
マリアの申し出が心に残していた傷も。
==============================================================================
2004.07.02